~しこ、~しこら、~がしこ、~がつ、~がと
【標準語】~だけ、~ほど、~ばかり
【品詞】副助詞
【意味】
(1)「~だけ」の「~しこ」
《意味》ある範囲を限定する意を表わす
(2)「~ほど」の「~しこ」
《意味》程度、限度を表わす
(3)「~ばかり」の「~しこ」
《意味》ある状態に相応する意を表わす
【同義】~しこ、~しこら、~がしこ、~がつ、~がと
【参考】由来は複数の説あるが、不明
・「~がと」は長崎由来、「~しこ」は熊本由来のようである
・「~しこ」は「~しか(四股)」や「しごく(至極)」の音変異という説がある
・「~がと」は「~が」と「~しこ」の複合体「~がしこ」の音変異と思われる
【注意】
・「~がと」「~がつ」は「~のもの」の所有を表わす意味がある
・詳細は「~がと」のページを参照ください
《用例》
・この車あカッコよかろ?俺ガトぜ、買うたとぜ、高っかたとぜ
→この車は恰好いいだろ?俺のものだぜ、買ったんだぜ、高かったんだぜ
・生ビールな俺ガト、芋のお湯割りなあんたんガト、酎ハイなミヨちゃんガト
→生ビールは俺の物、芋のお湯割りはあなたのもの、酎ハイはミヨちゃんのもの
【用例】
・あいた…灯油ののうなった。ごめんばってん…農協で2,000円ガト灯油ば買うてきて
→しまった…灯油がなくなった。悪いけど…農協で2,000円分灯油を買ってきて
・イモのたいそうでけとうけん、ああた…いるシコ掘って持って行ってよかよ
→イモがたくさん出来ているので、あなた…いるだけ掘って持って行っていいよ
・ミカン詰め放題やけん、このビニール袋い入るシコラ詰め込うで…たったの100円ばな
→ミカン詰め放題なので、このビニール袋に入るだけ詰め込んで…たったの100円だよ
イラストによる用例解説
【翻訳】
《上段》
「替え玉…バリカタ…もう一丁!」
「食べられるだけ替え玉して、いいよ~」
《下段》
「入るだけ野菜を入れなさい!」
「もう…入らないよ!」
イラストによる用例解説
「~しこ」「~がと」を使ったことば
(1)あれしこ、あれがと
《意味》あれだけ、あれほど、あんなに
《同義》あがしこ、あやしこ、あれしこ、あわしこ、あんしこ、あれがと
《用例》
・キャンプでカレーば作るげなばってん、肉なアレガトありゃあ…足りるっちゃなかな
→キャンプでカレーを作るそうだけど、肉なあれだけあれば…足りるんじゃないのか
・晩飯ばアレシコ食うたとい、夜食いラーメンやら食いよる…肥えるはずくさ
→晩飯をあれほど食ったのに、夜食にラーメンなんぞ食ってる…太るはずだよ
・なんなこのミカンな。アンシコしたとい、ぱすぱすして…うもうもどうもなか
→何だこのミカンは。あんなにしたのに、果汁が少なくて…旨くもなんともない
(2)これしこ、これがと
《意味》これだけ、これほど、こんなに
《同義》こがしこ、これしこ、こんしこ、これがと
《用例》
・今度の旅行な…ごっつおー食うたり贅沢したかけん、ぜんばコレガト使うてよかろ?
→今度の旅行は…ご馳走食ったり贅沢したいので、お金をこれだけ使っていいだろ?
・ぜんばコンシコ出しとうとい、まーだ足らんげな…いくらまどうたらよかとかいな?
→お金をこれほど出したのに、まーだ足らないそうだ…いくら弁償したらいいんだ?
・コレシコ仕事ばしようとい、夜もバイトい行きようと?…ぜんに困っとうと?
→こんなに仕事をしてるのに、夜もバイトに行ってるの?…お金に困ってんの?
(3)それしこ、それがと
《意味》それだけ、それほど、そんなに
《同義》そがしこ、それしこ、そんしこ、それがと
《用例》
・帰ろうえ…おらあもう食いきらん。食べ放題でソガシコ食うたっちゃけん、よかろうもん
→帰ろうよ…俺はもう食えない。食べ放題でそれだけ食ったんだから、いいだろう
・ばばしゃんから結婚祝いばたいそもろうた?ソンシコのぜん…よう持っとんなったなあ
→お婆ちゃんから結婚祝いをたくさん貰った?それほどの大金…よく持ってたものだ
・あれいソレシコ払うたっちゃ…何の得いもならんばい、感謝知らずの業突張りやもん
→あいつにそんなに払っても…何の得にもならないよ、感謝知らずの業突張りだもの
(4)どれしこ
《意味》どれだけ、どれほど、どのくらい
《同義》どがしこ、どれしこ、どんしこ
《用例》
・葬式いごいんげさんに来てもらうとばってん、ドレシコ包んだらよかとかいな?
→葬式にお坊さんに来てもらうんだけど、どのくらい支払ったらよいのかなあ?
・会長なドガシコ偉かか知らんばってん、あえん威張り腐るたあ…しかともなか男ばい
→会長がどれだけ偉いか知らないけど、あんなに威張り腐るのは…つまらない男だよ
・ゲームいドンシコ課金したっちゃ…なあもならん、その金ば自分い投資した方がよかばい
→ゲームにどれほど課金しても…何もならない、そのお金を自分に投資した方がいいよ
イラストによる用例解説
【翻訳】
「遠足のお菓子は300円分持ってきていいようになったから、母ちゃんお金ちょうだい」
「小銭がないから1,000円上げるけど、決められた分を買ってくるんだよ」
「お釣りは返してよ!」
「うわぁ…1,000円だって」
「~がと」「~しこ」に関連する言葉
なみだんしこ、はなくそんしこ、みみくそんしこ
【標準語】微量
【品詞】副詞
【意味】ごくわずか、ほとんどない、ほんの少し
【同義】なみだんしこ、はなくそんしこ、みみくそんしこ
【参考】
・涙や鼻糞など、わずかしか出ないものを使った言い回し
・「なみだんしこ」は、なみだ(涙)+ん(の)+しこ(程)で、涙の量ほど
・「はなくそんしこ」は、はなくそ(鼻糞)+ん(の)+しこ(程)で、鼻糞の量ほど
・「みみくそんしこ」は、みみくそ(耳糞)+ん(の)+しこ(程)で、耳糞の量ほど
【用例】
・「株で儲かったげなねえ?奢っちゃり」「ナミダンシコしか儲かっちゃおらん…」
→「株で儲かったらしいねぇ?奢ってよ」「ちょっとしか儲かってねえよ…」
・特別賞ば受賞したが…賞金なハナクソンシコ、飲み代いもならんっちゃもん
→特別賞を受賞したけど…賞金は少額、飲み代にもならないんだもの
・相続財産ば…もろうたばってん、負債も多かったけん…ミミクソンシコたい
→相続財産を…もらったけど、負債も多かったので…ほとんどなかったよ
イラストによる用例解説
しこたま
【標準語】どっさり
【品詞】副詞
【意味】数量が非常に多いさま、たくさん、数量の多いようすを表す俗な言い方
【同義】しこたま、たいそう、たいそ
【参考】
・「しこたま」の由来は諸説
・説1:しこ(~ほど)+たま(たんまり)→たんまりになるほど→たくさん
・説2:しこ(~だけ)+たま(たまる)→たまるだけ→たくさん
・「たいそう」の由来は「大層」で「甚だしい」の意味、関西や九州でよく使われる
・「たいそ」は「たいそう」の音変異
【用例】
・株でシコタマ儲かったげなねえ?奢っちゃり
→株でどっさり儲かったらしいねぇ?奢ってよ
・背のたっかもんやけん、天井のひっか家で…鴨居い頭ばシコタマ打ち付けたと
→背が高いものだから、天井が低い家で…鴨居に頭をひどく打ち付けたんだよ
・「えらいしこ…儲かったげなねえ」「シコタマ売れて…笑いの止まらん」
→「すごく…儲かったらしいねぇ」「どっさり売れて…笑いが止まんない」
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