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「も(モ)」の博多・糸島弁

1 ~もう
  【標準語】~みろ、~みよう
【意味等】
(1)「~みろ」の~もう(命令)
《意味》~してみろ(命令形)
《参考》他者に対して言う場合は命令形になる
《同義》~どう、~のう、~もう、~ろう
《用例》短い言い回し
・こっつぁい来てんモウ→こっちに来てみろ
・旨かけん食うてんモウ→旨いので食ってみろ
・おかしかなら笑うてんモウ→おかしいなら笑ってみろ
(2)「~みよう」の~もう(命令)
《意味》~してみよう(意志動詞)
《参考》自分の行動の場合は意思伝達になる
《同義》~どう、~もう、~ろう
《用例》短い言い回し
・あっつぁい行ってんモウ→あっちに行ってみよう
・うまかけん食うてんモウ→うまいので食ってみよう
・おかしかなら笑うてんモウ→おかしいのなら笑ってみよう
2 もう  《詳しくはこちら》
  【標準語】回る
【意味等】回転する、巡る、旋回する、巡回する、眩む、くるめく
【同義】まう、もう
【参考】「回う・舞う」の音変異
【用例】「朝から具合の悪か…目のモウて吐き気のする」「酒臭かけん、宿酔いやろ」
 →「朝から体調が悪い…目が回って吐き気がする」「酒臭いので、宿酔でしょ」
3 もうし  《詳しくはこちら》
  【標準語】ごめんください(呼び掛けの掛け声)
【意味等】御免ください、いいですか?、いらっしゃいますか?(挨拶・掛け声)
【参考】由来は「申す(もうす)」の音変異、人を呼び出すときの言葉・掛け声
【用例】「もーし、おらっしゃあ?」「あらまあ、久しかぶり…あがんなざっせい」
 →「ごめんください、おられますか?」「あらまあ、久し振り…お上がりください」
4 もうづかい
  【標準語】案内係
【意味等】催促人、宴会などが始まる時刻に出席者を会場に促すための使い
【参考】もう(もう:促す時刻)+づかい(遣い)→案内係
【用例】「モウヅカイの人の、そろそろ披露宴の始まるって…言いよんしゃあごたあ」
 →「案内係の人が、そろそろ披露宴の始まると…言っているみたいだよ」
5 もうもう  《詳しくはこちら》
  【標準語】四つん這い
【意味等】両手両足をつけて相手側に尻を上げ、肛門を露出させる行為
【同義】もうもう、もおもお、もおん
【参考】由来は「牛(モウモウ:幼児語)」牛の立ち姿(四つ足で立つ)による
【関連】幼児のお尻や肛門を確認、検便をするときなどに使う掛け声
【用例】「尻のすのかいか?どら…母ちゃんが診ちゃるけん、モウモウしてんない」
 →「尻の穴が痒い?どら…お母さんが診てあげるので、四つん這いになってごらん」
6 モウモウ
  【標準語】ウシ(幼児語)
【意味等】牛、哺乳綱鯨偶蹄目ウシ科ウシ亜科の動物
【同義】モウモウ、モオモオ
7 もうらしか  《詳しくはこちら》
  【標準語】蒸し暑い
【意味等】湿度が高くて暑い、蒸されるように暑くて苦しい
【同義】もうらしか、もおらしか
【参考】
・もう(もす:蒸す)+らしか(状況)→蒸されるような状況
・佐賀・長崎方面では「むうらしか」、「うむす(蒸す)+らしか」と思われる
【用例】「地球温暖化の進みようとかいな?まーだ5月んとい…モウラシカねえ」
 →「地球温暖化が進んでいるのかなあ?まだ5月だというのに…蒸し暑いなあ」
8 もおもお  《詳しくはこちら》
  【標準語】四つん這い
【意味等】「もうもう」に同じ
【用例】「あせこのでけようけん、天花粉ばつけちゃろう…モオモオしてんしゃい」
 →「汗疹ができてるので、ベビーパウダーをつけてやる…四つん這いになりなさい」
9 モオモオ
  【標準語】ウシ(幼児語)
【意味等】「モウモウ」に同じ
10 もおりじょう
  【標準語】子守
【意味等】ベビーシッター、乳母、子守りをする人、子守の丁寧な言い方
【同義】もおりじょう、もりじょう
【類義】もおりびい、もりびい(子守娘)
【参考】もおり(子守り)+じょう(~さん:丁寧な敬称)
【用例】「共働きで、夫婦ともえらい忙しかけん…モオリジョウい来てもらいよると」
 →「共働きで、夫婦ともとても忙しいので…ベビーシッターに来てもらってるのよ」
11 もおらしか  《詳しくはこちら》
  【標準語】蒸し暑い
【意味等】「もうらしか」に同じ
【用例】「こえんモオラシカとい、ひしていじゅう外で働いたら、具合の悪うなるよ」
 →「こんなに蒸し暑いのに、日がな一日外で働いたら、健康を害するよ」
12 もおりびい
  【標準語】子守娘
【意味等】子守りをする女の子、子守娘を卑下した言い方
【同義】もおりびい、もりびい
【類義】もおりじょう、もりじょう(子守りの丁寧な言い方)
【参考】もおり(子守り)+びい(娘:語源は「婢(はしため)」で低い身分の女子」
【用例】「昔な貧しか家の子な、放課後いなったら…モオリビイやらして働きよった」
 →「昔は貧しい家の子は、放課後になったら…子守娘などをして働いていた」
13 もおりよう
  【標準語】漏れている
【意味等】穴や隙間を伝って液体が滲み出ている
【用例】「瓦の割れて…雨のモオリヨウ、雨漏り用のバケツも…ほげてモオリヨウ」
 →「瓦が割れて…雨が漏れている、雨漏り用のバケツも…穴が空いて漏れている」
14 もおん  《詳しくはこちら》
  【標準語】四つん這い
【意味等】「もうもう」に同じ
【参考】話し言葉なので「もーん」「もうん」「もおん」など、聞こえ方が異なる
【用例】「痔の診察でモーンな、しょんなかが…看護婦の愛らしかけん、恥ずかしか」
 →「痔の診察で四つん這いは、仕方ないが…看護婦が可愛いので、恥ずかしい」
15 もく
  【標準語】枯れ枝
【意味等】地面に落ちている枯れ枝、枯れ松葉
【用例】「焚火の焚き付けいするけん、そこから乾いたモクば拾うてきちゃらん?」
 →「焚火の着火に使うので、そこから乾いた枯れ枝を拾ってきてくれないかい?」
16 もくさものう
  【標準語】出し抜けに
【意味等】突然、にわかに、不意に
【参考】もくさ(目算:見込み)+も+のう(無く)→見込むこともなく
【用例】「まとまりようとい…あれがモクサモノウいたらんこと言うけん、往生した」
 →「まとまりかけてるのに…あいつが出し抜けに余計なことを言うので、難儀した」
17 もくだい
  【標準語】下男頭、下男
【意味等】
(1)「下男頭」のもくだい
《意味》下男を監督する者、下男の頭
《参考》
・由来は「目代」で、現地で指揮すべき役職者の代理として派遣された役人(代官)
・経営者の代理として、従業員を取りまとめる班長のような者
(2)「下男」のもくだい
《意味》下男、雇用人、作男
18 もくどうろう
  【標準語】目論んでいる
【意味等】秘かに計画している
【参考】由来は「目論む」の音変異、「もくどうどう」とも言う
【同義】もくどうろう、もくろうどう
【用例】「お前たちゃ、何か悪そうしょってモクドウロウ?顔様ば見たんだあ分かる」
 →「お前たち、何か悪事を働こうと目論んでいるだろ?顔つきを見たら分かるよ」
19 もくひつ
  【標準語】鉛筆
【意味等】鉛筆、黒鉛と粘土を混ぜ合わせて焼いた芯を木の軸に入れた筆記用具
【参考】由来は「木筆」、構造は異なる筆記用具だが木製で触感が似ているため
20 もぐり
  【標準語】偽者
【意味等】詐欺師、スパイ、無許可の商売人、
【参考】
・由来は「潜り」、仲間を装い集団に潜入して不当な利得や情報を得ようとする者
・方言のようだが、全国で使われ、地域特有の言葉ではないので標準語と思われる
【用例】「博多っ子んとい、辛子明太子やら見たことなかやら…モグリやなかや?」
 →「博多っ子なのに、辛子明太子を見たことないなんて…偽者じゃないのか?」
21 もぐる
  【標準語】欺く
【意味等】騙す、誤魔化す、紛らす、詐欺をする、漏らす
【参考】
・由来は「潜る」、他者から見えない所に潜り込んで騙し欺いて悪事を働くこと
・方言のようだが、全国で使われ、地域特有の言葉ではないので標準語と思われる
【用例】「こえん捜査の厳しかとい、盗もうってモグルたあ…ルパンⅢ世ぐらいやが」
 →「こんなに捜査が厳しいのに、盗もうとして欺くのは…ルパンⅢ世ぐらいだよ」
22 もくろうどう
  【標準語】目論んでいる
【意味等】「もくどうろう」に同じ
【参考】「ど」と「ろ」が変異するため「もくろうろう」とも言う
【用例】「ああたたちゃ、あたきの誕生日い何かしょうって、モクロウドウげなね?」
 →「あなたたちは、私の誕生日に何かやろうと、秘かに計画しているそうね?」
23 もげる
  【標準語】ちぎれる
【意味等】脱落する、離れおちる、取れてしまう
【参考】由来は「捥ぐ(もぐ)」の受動態「もぐ+~れる→もげる」
【用例】「戦闘機の墜落したたあ、金属疲労で水平尾翼のモゲタとが原因げな」
 →「戦闘機が墜落したのは、金属疲労で水平尾翼が脱落したのが原因らしい」
24 もざくる  《詳しくはこちら》
  【標準語】扱い回す
【意味等】もみくちゃにする、いじり回す
【同義】もざくる、もみたくる、ももぐる
【参考】もざ(「もしゃもしゃ」の簡略)+くる(繰り返す)
【用例】「そえんネコばモザクリよったら、かきさかるるけん…やめときんしゃい」
 →「そんなにネコを扱い回してたら、引っ掻かれるから…やめておきなさい」
25 もさっと  《詳しくはこちら》
  【標準語】ぼーっと、ぼんやりと
【意味等】気合が入っていない様子、気力がない様、気が利かない様、間が抜けた様子
【同義】てれっと、ぼさっと、ぼやーんと、もさっと
【類義】ぼうすくてい、てれてれ、てれんぱれん
【対義】しかっと
【参考】「もさ」は、草が生い茂っている様や田舎者の振舞い、緩慢な動作などを示す
【用例】「見た目な…モサットしとんなあごたあが、仕事な早か…見かけたあ違あ」
 →「見た目は…ぼーっとしているように見えるけど、仕事は早い…見かけと違う」
26 もじゃける  《詳しくはこちら》
  【標準語】破れる
【意味等】ぐちゃぐちゃに壊れる、裂ける、砕ける、大破する、木っ端みじんになる
【同義】むじゃける、もじゃける
【参考】もじゃ(「もしゃもしゃ」の簡略)+ける(過去の助動詞「けり」の連体形)
【類義】ひしゃげる:潰れる、潰れ壊れる
【用例】「ガラスやけん…気ばつけて、落といてモジャケタら…まどうてもらうけん」
 →「ガラスなので…気をつけて、落として割れたら…弁償してもらうから」
27 もしゃもしゃ  《詳しくはこちら》
  【標準語】くしゃくしゃ
【意味等】揉みくちゃになる様、しわが寄ってくしゃくしゃな様子、しわくちゃ
【同義】しわごんちゃく、もしゃもしゃ、もじゃもじゃ
【用例】「酔うて帰ってきて、脱いだら脱ぎっぱなし…スーツなモシャモシャやが」
 →「酔って帰って来て、脱いだらぬぐっぱなし…スーツはくしゃくしゃだよ」
28 もじゃもじゃ  《詳しくはこちら》
  【標準語】くしゃくしゃ
【意味等】「もしゃもしゃ」に同じ
【用例】「テストばモジャモジャいして、してたあが…0点の証拠隠滅な、失敗やね」
 →「テストをぐちゃぐちゃにして、捨ててあるけど…0点の証拠隠滅は、失敗だね」
29 もす  《詳しくはこちら》
  【標準語】蒸す、蒸らす、熟させる
【意味等】
(1)「蒸す」のもす
《意味》高温の蒸気で調理する、蒸かす、高温多湿でむしむしする
《用例》「イモな、茹でたとよりモシたと…モシたとより焼いたとが…うまか」
 →「イモは、茹でたものより蒸したもの…蒸かしたものより焼いたものが…うまい」
(2)「蒸らす」のもす
《意味》蒸らす、蒸れるようにする、ご飯を蒸す
《用例》「ご飯な…炊き上がってすぐい蓋ば開けんと…モサなあいかん」
 →「ご飯は…炊き上がってすぐに蓋を開けないで…蒸らさなくてはいけない」
(2)「熟させる」のもす
《意味》果実を採ってから保存して熟させる、
《用例》「採りたてキウイな…硬うして食われん、いっとき置いてモイテ食うと」
 →「採りたてキウイは…硬くて食えない、しばらく置いて完熟させて食うんだ」
【同義】うます、おみあわす、おもす、もす
【類義】おみあう、おみる、もせる:蒸せる、蒸れる
【関連】「もす」は関東では「燃やす」の方言
30 もせる  《詳しくはこちら》
  【標準語】蒸せる、蒸れる
【意味等】
(1)「蒸せる」のもせる
《意味》高温の蒸気で調理される、高温多湿でむしむししている、蒸し暑い
《用例》「肉まんのモセルけん…食わん?」「こえなモセル日い…よう食うなあ」
 →「肉まんが蒸せるので…食べない?」「こんな蒸し暑い日に…よく食うなあ」
(2)「蒸れる」のもせる
《意味》蒸れて軟らかくなる、蒸れてじめじめする、ご飯が蒸れる
《用例》「ご飯な…炊き上がってすぐい蓋ば開けんと…モセルまで待たなあ」
 →「ご飯は…炊き上がってすぐに蓋を開けないで…蒸れるまで待たなくちゃ」
【同義】おみあう、おみる、もせる
31 モダマ
  【標準語】ホシザメ
【意味等】星鮫、ドチザメ科に属するサメの一種
【参考】刺身や湯引き(もだま)、干物(のうさば)として食べられるサメ
32 もだま
  【標準語】ホシザメの湯引き
【意味等】ブツ切りのサメの身に熱湯をかけて湯引きにしたもの、酢味噌で食べる
【参考】ホシザメは蒲鉾などの原料にもなり、肉厚でプリプリと美味しい
【関連】サメの身は九州北部、また中国地方の一部で(ワニ料理として)と食される
33 もちおし
  【標準語】餅競い
【意味等】餅押、毎年1月10日(初金昆羅)の夜に桜井神社で行われる厄除け神事
【参考】神社に奉納された大餅を、厄男が褌姿で競って押し合い、割れるまで取り合う
34 もちにいなる
  【標準語】お荷物になる
【意味等】持って行くのが負担になる、持って帰るのが難しい
【参考】もち(持つ)+にい(荷物に)+なる → お荷物になる
【用例】「せっかくばってん…モチニイナルけん、スイカな宅配便で送っちゃり」
 →「せっかくだけど…お荷物になるから、スイカは宅配便で送ってちょうだい」
35 もちまき
  【標準語】棟上式などの餅まき行事
【意味等】餅撒き、棟上式を祝いって神前に供えた餅などを屋根から群衆に撒く催し
【参考】最近は新築住宅の構造の変化や都市化などにより、あまり見なくなった
36 もちょこっと  《詳しくはこちら》
  【標準語】もう少し
【意味等】「まあひとせん」に同じ
【用例】「課長の奢りやけん…ケチケチせんで、モチョコットたっかとば頼んでん」
 →「課長の奢りだから…ケチケチしないで、もう少し高額なものを頼んでみてよ」
37 もっかい  《詳しくはこちら》
  【標準語】もう一回
【意味等】「まいっぺん」に同じ
【用例】「ちゃんとこ…やりそこのうてしもうた、モッカイ…チャレンジさしちゃり」
 →「迂闊にも…失敗してしまった、もう1回…チャレンジさせてくれ」
38 もっくりこっくり  《詳しくはこちら》
  【標準語】無理矢理、残らず全部、恐怖した様
【意味等】
(1)「無理矢理」のむっくりこっくり
《意味》無理無体、無理矢理
《用例》「スポーツな…楽しゅうせなあ、モックリコックリさせたっちゃ…つあらん」
 →「スポーツは…楽しんでやらないと、無理矢理にさせても、つまらない」
(2)「残らず全部」のむっくりこっくり
《意味》残らず全部、すっかりすべて
《用例》「大売出しい行たが…安売品なそうよう、モックリコックリ…売れとった」
 →「大売出しに行ったけど…安売品はすべて、残すことなく…売れてしまっていた」
(3)「恐怖した様」のむっくりこっくり
《意味》事物に恐怖した時の様子、無愛想な様
《用例》「夜中い酔うて窓から入って…モックリコックリ、心臓の止まるかと思うた」
 →「夜中に酔って窓から入って…恐怖に駆られて、心臓が止まるかと思った」
【同義】むっくりこっくり、もっくりこっくり
【参考】由来は「蒙古襲来」語源は「蒙古高句麗」
【関連】無理矢理やって来た2回の蒙古襲来に、命も奪われ、怖かったのでしょう
39 もったて
  【標準語】唐鋤(からすき:農業用語)
【意味等】鋤の種類のひとつ、牛鍬、盛立、牛馬に引かせ田畑を耕すのに用いる
【参考】柄が曲がって刃が広く左右に鋤き返えすことができる農具
【同義】はたけすき、もったて
40 もつなべ
  【標準語】もつ鍋
【意味等】ホルモン鍋、牛や豚のもつ(内臓肉/ホルモン)を主材料とする鍋料理
【参考】福岡のもつ鍋は第二次大戦後に発祥、もつ肉とニラ等を醤油味で煮込んだもの
41 もつる  《詳しくはこちら》
  【標準語】耐える、保つ
【意味等】
(1)「耐える」のもつる
《意味》我慢できる、継続できる
《用例》「50年以上前のカメラやが…まだ使わるる、昔の日本製な…長うモツル」
 →「50年以上前のカメラだけど…まだ使える、昔の日本製は…長く使える」
(2)「保つ」のもつる
《意味》維持する、保存がきく
《用例》「この頃の豆腐な…保存料な使うちゃれんとい、ようモツル…なしかいな?」
 →「この頃の豆腐は…保存料が使われてないのに、よく保存がきく…なぜだろう?」
【同義】もつる、もてる
【対義】もてん
【参考】由来は「持てる」で、保たれるや維持されるの意がある
42 もてる  《詳しくはこちら》
  【標準語】耐える、保つ
【意味等】「もつる」に同じ
【用例】
・こえん暑かとい…日していじゅう働いて、よう身体のモテルねえ…きつかろ?
 →こんなに暑いのに、一日中働いて…よく身体が我慢できるなあ…辛いだろ?
・このパック牛乳なすごか…高温殺菌やけん、常温で1年間もモテルげな
 →このパック牛乳はすごい…高温殺菌なので、常温で1年間も保存できるそうだ
43 もてん  《詳しくはこちら》
  【標準語】堪えられない、保てない
【意味等】
(1)「堪えられない」のもてん
《意味》我慢できない、続かない
《用例》「いっとき客の多かったが…最初だけ、あの店な…あと3か月もモテンばい」
 →「しばらく客が多かったけど…最初だけ、あの店は…あと3か月も続かないよ」
(2)「保てない」のもてん
《意味》維持できない、保存がきかない
《用例》「このケーキな美味かとばってん…モテンけん、持ち帰りできんっちゃが」
 →「このケーキは美味しいんだけど…保存がきかないので、持ち帰りできないんだ」
【対義】もつる、もてる
【参考】「もてる、もてる」の否定形
44 もとくるしか
  【標準語】ぎこちない
【意味等】円滑でない、ぎすぎすしている
【参考】もと(元:基本)+くるしか(苦しい:やり繰りが思うように行かない)
【類義】ねじくるしか(→堅苦しい)
【用例】「初めと司会ばしますけん、モトクルシカろうばってん…こらえちゃり」
 →「初めて司会をしますので、ぎこちないかもしれませんが…我慢してください」
45 ものまえ
  【標準語】結婚前
【意味等】結婚適齢期の男女
【参考】由来は「物前」大きな物事をする前(戦前、正月前など)
【用例】「ストカーのおるげなが、妹じょうなモノマエやけん…気ばつけとき」
 →「ストーカーがいるそうだけど、妹さんは結婚適齢期なので…気をつけなさいよ」
46 ものもの
  【標準語】耳打ち
【意味等】耳擦り、相手の耳元に口を寄せて囁くこと
【参考】由来は、他に聞こえないように「もそもそ」と物事を言うことから
【用例】「目の前でモノモノしなんな、俺い聞かれたんだあ困ると…ああ気分の悪か」
 →「目の前で耳打ちなんかするな、俺に聞かれたら困るのか…ああ気分が悪い」
47 もまからかす
  【標準語】揉めさせる
【意味等】紛糾させる、論議の収拾をつかないようにさせる
【参考】もま(揉む)+からかす(無理にさせる)→紛糾させる
【用例】「あれが…はしかかもんやけん、まとまりようとば…モマカラカスっちゃん」
 →「あいつが…攻撃的言い方なので、まとまりかけているのに…紛糾させるんだ」
48 もみがめつぶっとう
  【標準語】粃(しいな)(農業用語)
【意味等】「しいら」に同じ、殻ばかりで実のない籾、実らず萎びた果実
【用例】「今年な日照不足やったけん…稲いなモミガメツブットウとばっかしたい」
 →「今年は日照不足だったので…稲には実のない籾ばかりだ」
【同義】しいら、もみがめつぶっとう
49 もみがらやき
  【標準語】籾殻燻炭づくり(農業用語)
【意味等】肥料や苗代の保温・消毒に使用するため、籾殻を焼いて燻炭にすること
【参考】もみがら(籾殻)+やき(焼き)
【同義】くんたんやき、もみがらやき
50 もみさん
  【標準語】あんまさん
【意味等】あん摩を業とする人、マッサージ師
【参考】もみ(揉み)+さん(敬称)→プロのあん摩・マッサージ師
51 もみたくる  《詳しくはこちら》
  【標準語】もみくちゃにする
【意味等】「もざくる」に同じ
【参考】もみ(揉み)+たくる(何度も繰り返す行為)→もみくちゃにする
【用例】「ああた痴漢やろ?あたっか尻ばモミタクッタろ?」「おらあ…しとらん」
 →「あなた痴漢でしょ?私の尻をいじり回したでしょ?」「俺は…やっていない」
52 もみぬか
  【標準語】籾殻(農業用語)
【意味等】籾(籾米)の最も外側にある皮の部分、籾米の米を包んでいる部分
53 もめんびき
  【標準語】わたつむぎ
【意味等】綿紬、ほぐした綿花を糸車にかけて繊維を引き出し…よりをかけて糸にする
54 ももぐる  《詳しくはこちら》
  【標準語】もみくちゃにする、口の中でもぐもぐする
【意味等】
(1)「もみくちゃにする」のももぐる
《意味》「もざくる」に同じ
《用例》「筆の進まんとのごとある、ごみ箱な…モモグッタ原稿用紙のてっ詰っとう」
 →「筆が進まないようだ、ゴミ箱は…もみくちゃの原稿用紙が詰め込まれている」
(2)「口の中でもぐもぐする」のももぐる
《意味》咀嚼する、食べ物を嚙み砕く
《用例》「ああた食うとの遅かなぁ、いつまででっちゃモモグッテ…牛のごたる」
 →「あなた食うのが遅いなあ、いつまでもモグモグと咀嚼して…牛みたいだ」
【参考】もも(揉む)+ぐる(たくる:動作を繰り返す)→くちゃくちゃにする
55 ももじり
  【標準語】 尻の落ち着かないこと
【意味等】 少しもじっとしていないこと、落ち着きのないこと、座りが悪いこと
【参考】由来は「桃尻」昔のモモは少し尖っていて座りが悪かったことに出る
【用例】「代議士やらたいそ来ちゃあけん、おおごと…幹事なえらいモモジリやん」
 →「代議士などがたくさん来てるので、大変だ…幹事はまったく落ち着きがないぞ」
56 ももたぶら  《詳しくはこちら》
  【標準語】ふともも
【意味等】太股、足の上部の腰に連なる部位、大腿の後ろ側
【参考】もも(腿)+たぶら(臀:お尻、肉付きの好い柔らかい部分)→ふともも
【同義】ももたぶら、ももどう、ももんどう
【用例】「あのモデルさんのモモタブラな…色っぽか、おらあ…あえなとが好いとう」
 →「あのモデルさんの太腿は…色っぽいなあ、おれは…ああいうのが好みなんだ」
57 ももどう  《詳しくはこちら》
  【標準語】ふともも
【意味等】「ももたぶら」に同じ
【参考】もも(腿)+どう(胴体)→腿の胴体→太腿
【用例】「ボディービルばしたら、モモドウの太うなって…既製品のズボンな合わん」
 →「ボディービルをしたら、太股が太くなって…既製品のズボンは合わない」
58 ももんどう  《詳しくはこちら》
  【標準語】ふともも
【意味等】「ももたぶら」に同じ
【参考】もも(腿)+ん(の)+どう(胴体)→腿の胴体→太腿
【用例】「ああたのモモンドウば触らせちゃり?おらあ…モモンドウフェチやん」
 →「あなたの太腿を触らせてくれない?俺は…太腿フェチ(執着する人)なんだ」
59 モヤ
  【標準語】ウラジロ
【意味等】裏白、シダ植物門ウラジロ科に属するシダ
【参考】正月のお飾りに使われる
【同義】モヤ、モロノキ、モロムキ、モロモキ、モロモク
【関連】葉の裏が白く「共に白髪が生えるまで」と縁起の良い意味とも言われる
60 もやい  《詳しくはこちら》
  【標準語】共有物、仲間、船を横に連結する
【意味等】
(1)「共有物」のもやい
《意味》共同して使用すること、一緒に使うこと
《同義》けんたい、もやい
《用例》「ハサミなグループい、いっちょしかなかけん…モヤイで使うちゃり」
 →「ハサミはグループに、一つしかないから、共用して使ってください」
(2)「仲間」のもやい
《意味》仲間、同士、一緒、ともども
《同義》つれ、どうし、どし、もやい
《用例》「あたきとあんたあ…こまかとっからモヤイで、結婚する運命やったごたあ」
 →「わたしとあなたは…小さい時から一緒で、結婚する運命だったようだ」
(3)「船を横に繋ぐこと」のもやい
《意味》舫、二艘の船を寄せて繫ぐこと、また、そのための綱
《用例》「台風のきようけん、ボートの流されんごとモヤイいして、浜い上げとって」
 →「台風が来てるので、ボートが流されないように横に繋いで、浜に上げておいて」
【参考】由来は「舫舟(もやいふね)」2隻の小舟を一つに繋ぐこと
【関連】東京を始め…全国的に使われる方言
61 もやいうえ  《詳しくはこちら》
  【標準語】共同の田植
【意味等】複数の農家が協力してする田植え、グループでする田植
【参考】もやい(共同、仲間同士)+うえ(植え:田植え)
【用例】「昔ゃあ、田植えなおおごとやったけん…農区でモヤイウエしよった」
 →「昔は、田植えは大変な作業だったので…農区単位で協力して植えていた」
62 もやいだ  《詳しくはこちら》
  【標準語】共同の水田
【意味等】複数の家が共同して耕作する水田、共有の水田
【参考】もやい(共同、仲間同士)+た(田:水田)
【関連】神社の「神田(じんでん)」など地域施設を維持するための水田などがある
【用例】「神田なモヤイダやけん…ほんなこたあ貸さんで、氏子が耕作せないかん」
 →「神田は共有水田なので…本来なら貸さずに、氏子が耕作しないといけない」
63 もようのわるか
  【標準語】天気が悪い
【意味等】雨や今にも雨が降りそうな天候、空模様が悪い
【参考】もよう(空模様)+の(が)+わるか(悪い)
【用例】「昼からモヨウノワルカごと、天気予報で言いよった…傘ば持って行きない」
 →「昼から天気が悪くなるように、天気予報で言っていた…傘を持って行きなさい」
64 もようのでけてきた
  【標準語】雨が降りそうになる
【意味等】今にも雨が降りそうな天候になる、間もなく雨が降り出す空模様になる
【参考】もよう(空模様)+の(が)+でけてきた(雨降りの状態になる)
【用例】「モヨウノデケテキタ…もう、降るばい…早う洗濯もんば取り入れらなあ」
 →「今にも雨が降りそうだよ…もう、降るぞ、急いで洗濯物を取り入れなければ」
65 もりじょう
  【標準語】子守
【意味等】「もおりじょう」に同じ
【用例】「明治時代な保育園やらなかけん、モリジョウな上の姉さんの仕事やった」
 →「明治時代は保育園などないので、子守りは上のお姉さんの仕事だった」
66 もりびい
  【標準語】子守娘
【意味等】「もおりびい」に同じ
【用例】「昔の庄屋さんのとこいな…小作やらから、モリビイの奉公い来よった」
 →「昔の庄屋さんのところには…小作などから、子守娘が奉公に来ていた」
67 モロノキ
  【標準語】ウラジロ
【意味等】「モヤ」に同じ
【参考】由来は「諸向き(もろむき)」の音変異、統べて同方向を向く(縁起を担ぐ)
68 もろぶた
  【標準語】餅を入れる木箱
【意味等】餅などを一時的に保存する長方形の浅い木箱、多用途に使える浅い箱
【参考】由来は「諸蓋」箱や盆、蓋など諸々の用途がある広蓋のような浅い木箱
【用例】「お飾り餅な…モロブタ、モロムキのごたあたあ…そこ、お飾りな頼うどく」
 →「鏡餅は…餅を入れる木箱、ウラジロの様なのは…そこ、正月飾りは頼んでおく」
69 モロムキ
  【標準語】ウラジロ
【意味等】「モヤ」に同じ
【参考】由来は「諸向き(もろむき)」統べて同方向を向く(縁起を担ぐ)
70 モロモキ
  【標準語】ウラジロ
【意味等】「モヤ」に同じ
【参考】由来は「諸向き(もろむき)」の音変異、統べて同方向を向く(縁起を担ぐ)
71 モロモク
  【標準語】ウラジロ
【意味等】「モヤ」に同じ
【参考】由来は「諸向き(もろむき)」の音変異、統べて同方向を向く(縁起を担ぐ)
72 モワ
  【標準語】ホンダワラ
【意味等】馬尾藻、褐藻綱ホンダワラ科ホンダワラ属の海藻の一種
【参考】酢の物にして食べられたり、正月飾りとして使う地域がある
73 もん
  【標準語】門構えの納屋
【意味等】田舎屋敷の入口として門構えに建てられた物置小屋
74 もん
  【標準語】もの
【意味等】物、者、もの
【参考】物事や人をさす「もの(物、者)」の音変異
75 もんち  《詳しくはこちら》
  【標準語】私のもの(幼児語)
【意味等】俺のもの、唾つけた、キープした、自分の物・権利を主張する宣言の言葉
【参考】由来は不明、福岡都市圏の一部地域で使われる
【関連】「もんち、唾つけた」「唾つけもんち」は、さらに強い権利の主張
【用例】
・この饅頭…モンチ、唾つけた…俺がとっとうっちゃけん、食うたらくらするぜ
 →この饅頭…俺の物、唾つけた…俺が取っているんだから、食ったら殴るぞ
・ちょっと便所い行てくるけん、並んどう順番ばモンチしとっちゃらん?
 →ちょっと便所に行ってくるので、並んでいた順番をキープしてくれないかい?
76 もんばこ
  【標準語】籾箱(農業用語)
【意味等】籾米の保存箱、精米する前の籾米の収納庫
77 もんふるい
  【標準語】籾ふるい(農業用語)
【意味等】脱穀した籾の選別、籾を選別する箕(竹かご)
【参考】脱穀して藁屑などが混入した籾を、籾米だけに選別する行為、またその道具
78 もんやけん
  【標準語】ものだから
【意味等】ものだから
【参考】もん(物・者・もの)+やけん(~だから、~故に)
【用例】「ああたが”今が買い時やが…”て言うモンヤケン…株で大損こいたろうが」
 →「あなたが”今が買い時だよ…”て言うものだから…株で大損しちゃっただろう」

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